第5回 2005年10月27日(木)~29日(土) 福岡県福岡市
■第5回園芸福祉全国大会inふくおか 2005年10月27日(木)~29日(土)
第5回となる今回は、福岡市役所を主な会場として開催され、延べ1,000名を越える方々が参集して多彩な情報交換が行われました。
政令指定都市での初めての開催でしたが、新しい試みとして導入されたトークショーやポスターセッションなども好評で、夕刻からの交流会も含め、参加された 方々は、様々な地域からの参加者と活発な交流をされていたようです。また、大会開催時には、「第22回全国都市緑化ふくおかフェア(愛称:アイランド花どんたく)」も開催されていたこともあり、フェア会場での園芸福祉活動の実践・体験の場として「園芸福祉の庭」の視察と合わせ、福岡のメンバーが実践活動をしている病院や公園の見学会も実施されました。
▼開催概要
主 催 園芸福祉ふくおかネット、NPO法人日本園芸福祉普及協会
福岡県、福岡市
主 唄 NPO法人 日本園芸福祉普及協会
運 営 第5回園芸福祉全国大会inふくおか実行委員会
日 程 平成17年10月27日(木)~29日(土)
場 所 福岡市役所15階講堂、福岡国際ホール等
▼第1日目:10月27日(木) 13:30~ 福岡市役所15階講堂
●特別講演 松村 賢治((社)大阪南太平洋協会理事長)
「旧暦はスローライフの知恵ごよみ~古き日本の知恵を見直す~」
ヨットによる世界周航の旅で出会った南太平洋の人々から、環境共生社会~エコライフ~の大切さや伝承の必要性を強く感じられたそうです。また日本に明治5 年まで1300年もの間刻み続けられて来た「旧暦」に興味を持たれ研究を進めていくと、四季の移ろいを正確に予測できるばかりでなく、生活コストを下げ、 心豊かに暮らす生き方「スローライフ」の時間軸である事にも気づかれたそうです。都市と田舎のバランスの取れた発展には、いろり文化、農業体験、自然とのふれあい・・・など都市農村交流が必須と提唱。ご自身も建築家としての技術と世界を見てきた経験をフルに活かし「方丈庵21」を再生しスローライフを実践されています。自然や手作りの大切さを「旧暦」という時間軸にあわせることでより一層実感させられるお話でした。
●基調講演 進士 五十八(NPO法人日本園芸福祉普及協会理事長)
「都市社会と「農」――これからの園芸福祉活動」
都市化が進んできた現在、農業の持つ他面的な機能を見直す必要がある。百姓という言葉は、一人で多くの能力を持っていることであり、その技術が、これまでのわが国を支えてきた。それが現代に入り専門化、工業化が進んだことにより、それが失われてしまっている。21世紀を迎え、あらためて、「農」の持つ効果 を見直すと同時に社会の様々な面で活用すべき時を向かえているという視点から、都市のなかで展開されている様々な「農」の活動事例を含め、都市生活のなか における「農」の必要性を話され、その実践としては園芸福祉活動は、誰もが気軽に取り組める活動であり、今後さらに全国に普及することを期待していると語 られました。
●トークショー/園芸福祉ば、語らんね
『都市型園芸福祉のすすめ』
日本園芸福祉普及協会の吉長副理事長をコーディネーターに、特別講演・基調講演の講師2名、地元から九州がんセンター牛尾副院長、大会を支えた市民グループの園芸福祉福岡ネットの角銅さんを交えて、様々な角度から熱心な議論がされました。
会場からも意見や提案もあり、都市型園芸福祉にとどまらず幅広い分野についての熱い討論がされました。
●交流会
「よかよか交流会」 と名づけられた交流会には100名以上の方が参加。全国から来場の方へのインタビューや韓国から分科会発表に来られた方の挨拶など、地域交流から国際交流にまでにつながった会でした。最後は、祭り好きな方の多い博多ならではのどんたく踊り、参加者の多くが「しゃもじ」を持って会場内を練り歩くなど大変に盛 り上がりました。 |
▼第2日目:10月27日(木) 10:00~ 福岡市役所15階講堂、福岡国際ホール
●分科会:「緑いっぱい」分科会
会場に分かれ、以下の5つのテーマで行われました。各会場には50~80名ほどの参加があり、一部会場では事例発表だけで時間を費やしてしまった分科会もありましたが、熱心に耳を傾けていました。
第1分科会
「元気なまち」を取り戻そう~まちづくりと園芸~コミュニティ・ガーテンづくりを通して
分科会趣旨:今日、ガーデニングブームも手伝って、さまざまな地域で多様な形態のコミュニティガーデンがあります。隣人関係が希薄な都市部において、交流 の拠点となるコミュニティガーデンには多くの期待が寄せられており、福岡では、庭と建物が一体となった新たなコミュニティガーデンが生まれています。本分 科会では地域交流、高齢者の生き甲斐づくり、共同住宅のコミュニティ形成などの観点から国内、外の先駆的な取り組みを発表いただき、都市型コミュニティ ガーデンの新たな姿について議論します。
コーディネーター:越川 秀治(コミュニティアーキテクト)
事例発表者:角銅 久美子(園芸福祉ふくおかネット)・原 千砂子(チェルシークラブINおおいた)・青崎 安孝(古賀市緑のまちづくり協会)・チェ・ジェスン(仁川大学教授)
第2分科会
「美しい国土」を引き継ごう~都市の子供の育ちと園芸~都市環境の未来を探る
分科会趣旨:都市環境において、植物との関わりは、子供にとっては豊かな自然体験の可能性を秘めています。子供は、植物の育ちとの新鮮な出会いを通じて、 土と出会い、虫と出会います。そしてスーパーの棚の向側にある自然の循環を知り、都市の生活を見直す目を養います。そして都市では、子供と植物との豊かな 出会いは、人と人との関わりによってだけ生まれます。都市の子供の育ちについて園芸を通して考えます。
コーディネーター:近藤 加代子(九州大学大学院助教授)
事例発表者:尾上伸一(横浜市立下永谷小学校)・木下宏仁(福岡市立大名小学校)・平 由以子(NPO循環生活研究所)・堀内 幸弘(梶原ピッコロ保育園園長)
第3分科会
「生命(いのち)の力」を高めよう~医療・福祉と園芸活動~癒しの庭を考える
分科会趣旨:病めるひと、心身に障害を持つ人などが花みどりと関わることによって癒されそして明日に希望を持てたという話は身近なところでよく耳にするこ とです。精神・リハビリから末期医療の分野、そして、知的・身体障害者の自立支援を目的とした分野まで、植物の持つ多面的な機能を生かした活動は多彩に展 開されています。この分科会では医療や福祉関係などの施設での庭づくりや療法的活用に関わる方々の発表を通して、園芸活動がもたらす役割や効果・効用について話し合います。
コーディネーター:近藤 まなみ((農)フラワービレッジ倉渕生産組合理事
事例発表者:山崎 博子(園芸福祉ふくおかネット)・野尻 眞(白川病院院長)・進藤 和昭((社)野の花学園施設長)・高松 雅子(広島国際大学医療福祉学部講師)
第4分科会
「田舎暮らし」を楽しもう~交流と園芸~スローフード、スローライフの紹介を通じて
分科会趣旨:産業の 近代化の中で置き去りにされてきた「田舎暮らし」は、私達が直面する様々な健康・環境にまつわる問題点に光を当て、新たなライフスタイルによる解決を目指 そうとしています。「スローフード」、「スローライフ」、そして、「グリーンツーリズム」という言葉が違和感無く受け入れられるのは、その質が本物指向で あり、個人の実践に委ねられているからだと思います。本分科会は、都市近郊の田舎暮らしに関わり、交流をキーワードに実践されている市民活動家、生産者、 そして、レストラン経営者を招き、時代を先取りした実践状況とその楽しみ、今後の方向性について議論します。
コーディネーター:朝廣 和夫(九州大学大学院助手)
事例発表者:近藤 龍良((農)フラワービレッジ倉渕生産組合理事長)・井上 信男((有)クローバー 代表取締役)・小林 和彦(NPO法人きらり水源村事務局長)・平岡 薫(ヒラオカ楽農園)
第5分科会
金持ちから時持ち社会へ ~都市型高齢者施設の地域貢献~ 造縁学のすすめ
分科会趣旨:都市生活で高齢者は、例え家族と生活していても孤独感を感じるなど人と人のつながり(縁づくり)を求めています。また、都市部に急増してきた 老人ホームをはじめ様々な高齢者施設では、地域に開かれた施設づくりに取り組んでいます。自宅や老人ホーム内で行われていた園芸活動が、各種の高齢者施設 を拠点に地域に向けて展開することで、人生をゆっくり楽しみ、しかも安心できる社会づくりを提案できるのではないか。本分科会では、高齢者施設を拠点にし た県内外の実践例を紹介し、住民の意見も交えた議論をします。
コーディネーター:黒木 邦弘(西日本短期大学助教授)
事例発表者:佐々木 一成(西日本短期大学助手)・(特別養護老人ホーム仙寿苑)・井戸 誠二(岐阜県立国際園芸アカデミー専任指導員)・前川 良文((農)花みどりの里代表理事)
●「友達いっぱい」ポスターセッション『全国から~彩りあざやか、園芸福祉活動』
私の、私達の、園芸福祉活動を伝えましょう。ということで、今大会から導入されたポスターセッションには、全国から21件の活動事例が寄せられました。(会場:福岡市役所15F講堂)
手づくりのポスターを通して活動を紹介しながら参加者との交流を深められたようです。いろいろな情報のやりとりや友達の輪が、日々の園芸福祉活動をもっと 楽しく、充実したものにつながったのではないでしょうか。見学者は、投票用紙を受け取り、1点1点のポスターや説明内容を聞いたうえで気に入った作品に投票、その結果は以下の通りです。
<金賞>
岐阜県園芸福祉サポーター 園芸福祉の輪を広げよう~イベントでのPR活動を通じて~
名張市園芸福祉普及推進協議会:名張市の園芸福祉の取り組み
<銀賞>
カモメ広場緑化活動:福岡沖地震によるかもめ広場仮設住宅の緑化
<銅賞>
福岡県立養護学校「北九州高等学園」:作業学習・職業体験学習活動報告
三重県科学技術復興センター農業研究部:バリアフリーイチゴ高設栽培システム
表彰式も行われましたが、「135人の閲覧者による評価ですが、個々の活動内容は全て素晴らしいもので、解説者として立ち会えない箇所など出展作品に順位をつけるのは心苦しいことでした。」というのは、審査を行った事務局の人たちの声です。
●園芸福祉フォーラム
大会を総括して、今後の園芸福祉活動を考えるために設けられた園芸福祉フォーラム。岡本均大会実行委員長をコーディネーターに5つの分科会のコーディネーター担当に加え、初日の講演講師も登壇して、各分科会での討論内容の報告をもとに、会場との意見交換もされました。
韓国から分科会発表に参加され、大きな集合住宅団地の緑化に取り組まれているという大学教授からは、園芸福祉の活動は、日本国内のみならず、韓国でも参考になるとの発言もあり、全国大会にとどまらず、国際大会ということも、今後、考えられるのではということで締めくくられました。
▼ 第3日目:現地視察(緑化フェア会場・古賀市園芸福祉農園・九州がんセンターの3ヶ所)
最終日は、9月から開催中の都市緑化フェアの会場を含め、3ヶ所の視察会。地元の初級園芸福祉士を中心に実践活動が進められている会場です。都市緑化フェア会場には、「園芸福祉の庭」のコーナーも設けられ、多彩な実習会が展開されています。(写真右)
2ヶ所目は、福岡市隣接の古賀市総合運動公園グリーンパークの一角に福祉ゾーンにある介護予防支援センターに付属して作られた園芸福祉庭園“ふれあいガー デンあい”があり、苗づくりから花壇・畑づくりを通して、元気まちづくりの各種活動を始められています。(写真中央)
3ヶ所目は、特別行政法人九州がんセンター「癒しの庭」。8月には初級園芸福祉士養成講座が開催され、実習会場としても使われています。現場で副院長から、医療面での効果などの説明もありました。(写真右)
参加された方々は、それぞれの希望会場を視察、熱心な意見交換がされました。