第4回 2004年9月2日(木)~4日(土) 静岡県浜松市

第4回:園芸福祉全国大会 in しずおか 2004年9月2日~4日

大会期間中は、全国から延べ2,000名以上と、当初の予想を大幅に上回る参加をいただき、関心と期待の大きさを実感した大会となりました。全国から参加された皆様、ありがとうございました。


開催趣旨:社会経済やライフスタイソレ等が大きく変化している現在、安全で安心な食料の生産やゆとりある居住環境の創造が求められており、自然と共存する農村や農耕、園芸が持つ役割が見直されております。この様な中、「花や野菜を育てて、みんなで幸せになろう。」という園芸福祉の活動が全国で始まっており、園芸療法や高齢者福祉、環境保全、地域づくり、さらには情操教育まで、幅広い分野での園芸福祉の活動が期待されております。
障害の有無や年齢、性別などに関係なく、あらゆる人々を対象としたこの活動は、静岡県で推進しているユニバーサルデザインの考え方と共通することから、静岡県ではこれを「ユニバーサソレ園芸」として推進することとしております。
ユニバーサル園芸(園芸福祉)は、農業、教育、医療、福祉、環境など多くの分野に関わる概念です。世界最大級の国際園芸博覧会である「浜名湖花博」が開催されているこの機会に、関連する様々な分野の人々にお集まりいただき、NPO法人日本園芸福祉普及協会が主唱する園芸福祉全国大会を開催することで、ユニバーサル園芸(園芸福祉)を大きく飛躍させる契機としたいと考えております。
4今大会では、開催テーマとして「つなげようグリーンネックレス!」を掲げました。これは、植物をバトンにし て、ユニバーサル園芸(園芸福祉)に関わる多くの人・団体が、相互に、情報交換や人材活用などを行い、ネックレスのように連携し合うことによって、誰もが 幸せになるというユニバーサル園芸(園芸福祉)の活動を表したものです。このユニバーサソレ園芸(園芸福祉)を通じたグリーンネックレスの輪が、静岡県から全国に広がっていくことを期待し、活発な議論、提案の場としたいと考えております。(大会誌より)


9月2日(木)第1日目:アクトシティー浜松中ホール
県内外の高校生を含め、1,000名以上が参集、熱気あふれる大会となりました。
●13:00 開会式
実行委員長挨拶、静岡県知事挨拶、浜松市長・農水省等来賓挨拶、開会宣言)
●13:30 基調講演 「“しあわせ”を育む園芸・農業」
講師:木村尚三郎氏/静岡文化芸術大学学長(東京大学名誉教授)
1これまでの歴史や海外での動きなども含めて農耕や園芸を
通じた人々の“幸せ”について語っていただきました。
15:20 ミ二コンサート
音楽の街浜松ならではのミニコンサート。
市内養護学校の生徒さんによってサンバの曲を中心に
活気あふれる演奏と踊りが行われました。
15:50 園芸福祉の普及の向けて

3<講演>「自然・緑・農から「園芸福祉」へ」講師:進士五十八氏/日本園芸福祉普及協会理事長、東京農業大学長
いま、何故「園芸福祉」が大切なのかについて、①都市と工の時代から農の時代へ、②生産学から生活学へ、③経済福祉から環境福祉へという時代背景とともに、①人間と自然、②ひとと「緑」、③市民にとっての「農」、それぞれの関係から、活動の可能性や今後の方向について、わかりやすく話されました。
<静岡県下の取組み紹介>浜名湖花博におけるユニバーサルデザインの取組みについて/静岡県におけるユニバーサル園芸の取組みについて、それぞれの団体から説明がありました。

218:00 交流会
200名近くが参加、地元の食材を使った料理に舌鼓をうちながら、活発な交流や情報交換が進められました。 また、’89年第7回インターフローラ・ワールドカップで日本人初のチャンピオンとなり、’98年の冬季長野五輪では表彰式用ブーケデザインを担当された、フラワーデザイナーの村松文彦氏がフラワーアレンジメントのパフォーマンスを披露してくださいました。その作品をバックに参加者全員の記念写真を取りました。

 


9月3日(金)第2日目/アクトシティー浜松コングレスセンター会議室
●9:30 分科会;7つの分科会には、50~100名と全体で約600名が参加、
園芸福祉の様々な可能性について、事例発表を含め熱心な討論がされました。
・第1分科会:医療現場における園芸療法の実践に向けて
はなみずきクリニック院長 鈴木節夫氏をコーディネーターに、パネリストとして県立こころの医療センター作業療法士 岡庭隆門氏、アドバイザーとして広島国際大学医療福祉学部教授・日本園芸福祉普及協会副理事長 吉長成恭氏が参加、病院、高齢者福祉施設などにおける園芸療法の導入の意義や効果などについて報告するとともに、これから園芸療法を導入するにあたっての現場の具体的な悩みや問題点についてどのように解決していくかが話し合われました。

7・第2分科会:障害者の農・園芸就業
浜松市で障害者を雇用して農業をしている京丸園園主 鈴木厚志氏コーディネーターに、 パネリストとして、オランダのライスヴァイク市地域社会授産機関シオンスガーデン所長 クレメント・ノーテンボーム氏、障害者、心の病気の方などの生活支援・生活相談にのっている生活支援センターだんだん所長 伊藤泰治氏、広島県呉市の知的障害者更生施設野呂山学園統括部長 小田原裕紀氏、 アドバイザーとして群馬県のフラワービレッジ倉渕生産組合理事 近藤まなみ氏などにより、 福祉施設や農業者に対する福祉施設や農業者に対するアンケート結果の紹介やオランダの 授産施設(栽培部門)での取組みなど、障害者の園芸就業にかかる実践事例をもとに ジョブコーチの必要性などについて話し合われました。

・第3分科会:青少年の「生きる力」を育てる園芸活動
8コーディネーターとして県立田方農業高等学校教諭 久保田豊和氏、パネリストとして92年よりアメリカを舞 台に、死と向き合う人々の最後の生き方、自然や動物との絆がもたらす癒しなどをテーマに取材を続けているフォトジャーナリスト 大塚敦子氏、草花クラブ員 達とアジサイの育種・新種開発を行い障害者施設での苗の共同栽培を進めている京都府立桂高校 教諭 片山一平氏、小学校を中心とした世代間交流事業「美しい街づくり福岡」の活動へ発展しているEWBL/花のアトリエ代表 木村三重子により、米国の 少年更生施設でのガーデンプロジェクトの事例や国内の農業高校・小学校などでの取り組み事例を素材に、園芸活動が情操面を含め青少年の生きる力を育てることにどのようにつながるか話し合いまました。事例発表として田方農高、桂高校生徒・OBなどの発表も行われました。

・第4分科会:庭がなくてもガーデンライフ~農園芸のある暮らし~
コーディネーターは、千葉県市民農園協会会長 廻谷義治氏、パネリストとして埼玉県さいたま市でグループホームを展開している(有)福祉ネットワークさく ら 小川志津子氏、サッポロビール(株)静岡工場総務部副部長 根本孝行氏、静岡県の平岡楽農園利用者 小池矗征氏、島根県石見町ふぁいん倶楽部代表 松本弘江氏などにより、心豊かな人生を送るためには、庭の有る無しにかかわらず生活の中に園芸があることが大切であること前提に、様々なかたちで園芸を実践 している方々からの報告をもとにガーデニングライフの場をどうやって確保し、発展させていくかについて話し合いました。

・第5分科会:花の庭から集いの庭に~園芸福祉を地域づくりに活かす~
9コーディネーターとして都市の緑地計画、景観設計から様々な緑のまちづくりプロジェクトに”市民派コンサル”として参画しているコミュニティアーキテクト 越川秀治氏、パネリストには自家遊休地を利用した園芸福祉活動を行っている栃木県のエム・グリーンデザイン代表 茂木正行氏、埼玉県川越市でNPO法人土と風の舎 を主宰している上原すみれ氏、天竜市天竜花の会 向井喜美氏、静岡有機循環コンサルタント協同組合 小林召二氏などによって、コミュニティガーデンや市民農園 など地域の様々な場での事例をもとに、いかに園芸活動を地域づくりに活かすかについて議論を深めるとともに、地域で活動の場を作るうえでの課題やその具体的な解決方法についても話し合いました。

・第6分科会:明日咲く花に思いをのせる~園芸が高齢者に与える効果~
10コーディネーターは各市町村の保健センターでの機能訓練教室等へのスタッフ派遣を行なう、在宅ケアサービス (株)LCウェルネス代表取締役 見野孝子氏、パネリストとして、三重県藤原町元町長 伊藤正俊 、静岡市農業協同組合 高齢者福祉課長 徳田孝氏、岐阜県園芸福祉サポーターとして介護老人保険施設と身障者施設にてサポート活動を行っている 酒井尚美 氏などで元気な人から介護が必要な人まで、園芸と関わる活動が高齢者の生きる力につながっています。高齢者が生き生きと農業公園づくりや菜園づくりに従事したり、園芸活動を行うデイサービスで楽しんでいる事例をとおして、その活動を支援する方法について話し合いがされました。

・第7分科会:園芸福祉を社会に根付かせるために
11コーディネーターは日本クラインガルテン研究会 幹事・事務局長 粕谷芳則氏、パネリストは静岡市の医療法人「秀慈会」(白萩病院、介護老人保健施設 萩の里)理事長 萩原秀男、NPO日本園芸福祉普及協会専務理事 近藤龍良氏、岐阜県立国際園芸アカデミー生 涯学習担当技術主査 井戸誠二氏、静岡県農業水産部 農業振興室長 遠藤徳良氏などによって、園芸福祉の活動の場をどのように作り出していくかについて、岐阜県や静岡県など行政での取り組み、日本園芸福祉普 及協会で目指すもの、受け皿となる地域の施設での事例を通して、園芸福祉士の必要性も含め実践の場づくりについて話し合われました。

●14:20 園芸福祉(ユニバーサル園芸)フオーラム
分科会に参加した大半の方が参加、テーブル付きで用意した会場を急遽イス席に変更せざるを得なくなるハプニングもあり、主催者にとってはうれしい悲鳴。最後まで熱心に意見交換が交わされました。

5県立田方農業高等学校教諭 久保田豊和氏がコーディネーターを努め、パネリストはNPO日本園芸福祉普及協 会専務理事 近藤龍良氏、シオンスガーデン所長 クレメント・ノーテンボーム氏、フォトジャーナリスト 大塚敦氏、静岡県園芸療法研究会 天野 一氏、京丸園園主 鈴木厚志氏、アドバイザーとして広島国際大学医療福祉学部教授・日本園芸福祉普及協会副理事長 吉長成恭氏によって「園芸福祉の定着と 条件整備へ」をテーマに、園芸福祉活動を今後も継続し、さらに拡大していくための地域とのつながりや経営管理・資金調達のあり方など、自立的に活動を推進 していくための方策について話し合われました。


9月4日(土)第3日目/周辺農家と浜名湖花博視察
●障害者雇用による農業経営を実践する現場視察 9:30
12【視察先の概要】
<京丸園> 農業経営における障害者の雇用。水耕ミツバ等を生産する農業組織であり、水耕部、土耕部、心耕部の3部を持つ。心耕部では、社員をジョブコーチ(園芸福祉士)として育成するとともに、障害者の作業を細分化・単純化し、トラブルに対応している。現在、障害者7名(4名の常雇と3名の研修生)を受け入れている。京丸ブランドの確立など先進的な経営に取組んでおり、第33回日本農業賞個別経営の部・特別賞を受賞している。

13<隆花園> 農業経営における障害者の受入。観葉鉢物を生産する農業組織であり、通院患者リハビリテーショ ン事業を含め、合計で6名の障害者を受け入れている。発根後の鉢上げ、肥料置き、除草、運搬作業等をそれぞれの適性、能力に応じて役割分担している。障害者の所属する生活支援施設の指導員が週に3回~3か月に1度指導にきているが、実質的には園主である新村氏がジョブコーチの役割を担っている。花博にも2万鉢の苗を出品している。

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